四畳半×9

4畳半×9

建築面積約20坪の住宅。そこには四畳半9つから成るひとつの大きな居間があるだけである。無難な便利さは潔く放棄し、この家族が生活を営むにあたり「本当に必要なものとは何か」徹底的に突き詰めた結果導かれた。この住居の暮らしは至極シンプルで、布団を敷けば寝床となり、飯を食えば食堂になる、こんにち失われてしまった日本家屋の暮らしそのものである。

戸首の細工によって、建具自体が壁となるため、必要に応じて個人のプライベートを確保し、自由に居場所をつくることができる。

9つある四畳半の空間には、なるべく特質性をもたせた。大きな窓から公園を眺めることのできる四畳半や、開放性のある吹き抜けの四畳半、キッチンのある四畳半などである。これら質の異なる空間の断片がまるでパッチワークのようにつながって短期的及び長期的に多様な様相を現す。住人の活動やアクティビティ、あるいはライフスタイルの変化に応じ、空間が変わってゆく住居である。