石川県七尾市 でか山のまち構想計画

photo by okada studio

私は卒業設計として「でか山のまち構想計画」を考えた。この七尾という地でここにしかない強みを生かし、どこにも無いような場を生み出したいと考えた。どこでも成立し得る建築ではなく、そこであるからこそできる建築に興味がある。建築とは土地の文化、自然環境、そして人、あらゆる要素が組み合わさり生まれるものであると考える。能登半島では夏になると毎週当たり前ように祭りが行われている。こんなに祭りが多い地域も珍しい。仕事よりも祭り優先社会が現実に存在し、文化祭礼が見事に継承されている。周囲には豊かな自然が形成され、土地の環境を生かした伝統的な農村文化・農村景観を維持保全している。「能登は優しや 土までも」これは能登の風土を表し、人はもとより土までも優しいというような意味だと言われる。

でか山のまちとはこうだ。
でか山の構造を踏襲した動く建築とそれらをサポートするドックと言う動かない建築からなるまちである。住宅、八百屋、旅館、美術館、あらゆるものがでか山建築とドック一対となり約80箇所まちの中に点在している。動くものと動かないものの多様な組み合わせや接続の仕方によって日々新たな空間が自然発生する。また現実のでか山には3つの山町が存在することから、それぞれまちのアイデンティティとなるお祭り広場を計画した。まちに点在するドックから、まるでタマシイが抜け出て集結するかのようにでか山建築がお祭り広場に集まることで、まちは生き物のように膨張伸縮を繰り返す。このでか山のまち構想は、傍から見れば非現実的だと思われるかもしれないが、七尾では現実の延長線上にあるものだ。
現在石川県七尾市の人口は5万3千人。ここ10年足らずのうちに約1万人減少した。日本全国至る所で地方都市が衰退し、終わりの見えない試行錯誤を続けているが、七尾もその一つである。私はそんな衰退著しい地域であっても、これだけの希望が描けるんだ、と示したかった。地域に生きる人々が自信に満ち溢れ、「どうだ、こんな場所見たこと無いだろう。」と言わんばかりの姿を想像し、世界中の人々がこの土地の生き様を目の当たりにする未来を思い描いた。この地域に根付くでか山を動く建築としてまちに広げてゆけば、時代を超えて地域の人々に愛され続け、後世に残る建築地方都市が誕生するのではないだろうか。 http://u35.aaf.ac/

石川県七尾市 でか山のまち構想計画
石川県七尾市 でか山のまち構想計画
石川県七尾市 でか山のまち構想計画

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